不動産クラウドファンディングにおいて、投資家が注目すべき点の一つに「マスターリース契約」の有無があります。マスターリース契約は、投資家の配当原資となる賃料収入が安定して得られる仕組みです。
今回は、そもそもマスターリース契約とはなにか、メリットやデメリットも一緒に詳しく解説していきます。
- マスターリース契約の仕組み
- 賃料固定型・賃料変動型の違い
- サブリース契約との違い
- 投資家にとってのメリットとリスク
マスターリース契約ってなに?
マスターリース契約とは、オーナー(不動産所有者)と事業者(運営者)の間で交わされる一括賃貸借契約です。
オーナーが物件全体を事業者に貸し出し、事業者がその物件の運営・管理を担います。事業者は転貸などを通じて収益を得た上で、オーナーへ賃料を支払います。
通常の賃貸契約ではオーナーが直接テナント(借主)と契約し、物件の維持管理も自ら行います。マスターリース契約ではその役割をすべて事業者が担うため、オーナーは物件の細かい管理に関与する必要がありません。
【各当事者の役割】
オーナー(不動産所有者)
物件の管理・運営をすべて事業者に委託し、事業者から賃料を受け取ります。
事業者(運営者)
賃貸借契約・物件の維持管理・運営等をオーナーの代わりに行い、オーナーへ賃料を支払います。
(受け取った賃料)−(オーナーへ支払う賃料)=事業者の利益
不動産クラウドファンディングにおいては、このオーナーの立場にあたるのがSPCまたは事業者であり、投資家はその賃料収入を分配金として受け取る構造です。
長期にわたる契約が結ばれ、オーナーへの賃料が固定されていることが多いため、投資家が安定収益を得られる大きな要素となっています。
賃料の支払い方法:固定型と変動型
マスターリース契約では、事業者からオーナーへ賃料を支払う仕組みになっています。その賃料の支払い方法として、「賃料固定型」と「賃料変動型」の2種類があります。
賃料固定型
物件の空室状況に関わらず、一定の賃料がオーナーへ支払われる契約形態です。「家賃保証型」とも呼ばれます。
事業者からオーナーへの賃料を80万円と定めた場合、賃料収入が100万円でも空室が増えて50万円になっても、オーナーへの支払いは80万円で変わりません。
〇メリット:空室の有無に関わらず安定した収入を得られる
△デメリット:市場賃料が上昇しても賃料は増えない。また後述するように、固定型であっても減額リスクがゼロではない
賃料変動型
物件の空室状況に応じて、オーナーへ支払われる賃料が変わる契約形態です。
事業者の賃料収入の10%をマスターリース手数料とし、残りの90%をオーナーへ支払う契約とした場合、賃料収入が100万円なら90万円、空室が増えて50万円になれば45万円がオーナーへ支払われます。
〇メリット:市場や物件によっては賃料固定型より多くの収入を得られる可能性がある
△デメリット:市場の影響を受けやすく、空室保証がないためリスクが高い

サブリース契約との違い
マスターリース契約とサブリース契約はセットで語られることが多いですが、契約の当事者が異なります。
| マスターリース契約 | サブリース契約 | |
|---|---|---|
| 契約の当事者 | オーナーと事業者 | 事業者と入居者(第三者) |
| 契約の内容 | オーナーが事業者に物件を一括で賃貸する契約 | 事業者が入居者へ物件を再賃貸(転貸)する契約 |
つまり、マスターリース契約とサブリース契約は同じ物件に対して2段階で結ばれる契約です。オーナーが事業者へ貸す契約がマスターリース、事業者がさらに入居者へ転貸する契約がサブリースという関係になります。

投資家にとってのメリット
マスターリース契約を利用した不動産クラウドファンディングには、いくつかの大きなメリットがあります。
①リスクの軽減
賃料保証がある場合、物件が空室であっても一定の賃料収入が得られます。空室リスクが投資家の収益に直結しにくくなる点は、特に長期投資を考えている方にとって大きなメリットです。
②安定した収入
マスターリース契約では市場の変動に左右されず一定の賃料が支払われるケースが多いため、予測可能な収益を見込みやすくなります。ファンドの分配金計画が立てやすく、安心して投資判断を行える材料になります。
投資家が知っておくべきリスク
マスターリース契約には多くのメリットがある反面、いくつかのリスクもあります。
①賃料収入の上限が固定される
賃料固定型では収益が安定する反面、市場賃料が上昇した場合でも契約で固定された賃料以上の収益は得られません。場合によっては、実際の市場賃料より低い水準に固定されてしまうリスクもあります。
②賃料固定型でも減額されるリスクがある
「賃料固定型だから安全」とは限りません。マスターリース契約の中には事業者がオーナーに対して賃料減額を要求できる条項が含まれているケースがあります。
また、事業者自体が経営難に陥ったり破綻したりすると、賃料の支払いが滞り投資家への収益が途絶えるリスクもあります。
投資前にマスターリース契約の有無だけでなく、賃料の種類・減額条項の有無・事業者の財務状況まであわせて確認することが重要です。
まとめ
マスターリース契約は、不動産クラウドファンディングにおいて投資家に安定した収益をもたらす重要な仕組みです。ただし「マスターリース契約あり=安全」と単純に判断するのは禁物です。
賃料固定型・変動型の違い・減額リスク・事業者の経営状況を総合的に確認した上で投資判断を行いましょう。
次のステップへ
マスターリース契約の仕組みが理解できたら、不動産クラウドファンディングの契約形態やリスク軽減の仕組みについても確認しておきましょう。
匿名組合型・任意組合型の違いと自分に合った契約形態を確認したい方は「不動産クラウドファンディングの匿名組合型・任意組合型とは?仕組みと選び方を解説」をご覧ください。
万が一の損失から投資家を守る優先劣後出資制度の詳細を知りたい方は「不動産クラウドファンディングの優先劣後出資制度とは?」をご覧ください。
SPC型ファンドにおける物件保有の仕組みや倒産隔離の詳細を確認したい方は「SPC型不動産クラウドファンディングの仕組みと投資家のメリット」をご覧ください。
マスターリース契約に関するよくある質問
【監修】

穴吹興産株式会社 不動産ソリューション事業部
アセットマネジメントグループ課長 穴吹 章彦
【資格】
・宅地建物取引士
・不動産証券化協会認定マスター
【経歴】
ソリューション事業部の業務に7年従事し、投資用不動産のアセットマネジメント業務を経験。現在は不動産特定共同事業におけるファンドの組成業務に従事し、投資家との契約業務全般を担当。不動産クラウドファンディングの仕組みや専門用語を解説しながら、情報発信を行っている。
